塾を選ぶとき、多くの保護者がまず目にするのが「合格実績」です。ところが、各塾が発表する難関校の合格者数を足し合わせると、学校が発表する合格者数をはるかに上回ることがあります。「どうしてこんなことが起こるの?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、合格実績が大きく見えるのには、ダブルスクール、教材の提携、特待生制度という3つの仕組みが関わっています。どれも不正というわけではありませんが、仕組みを知らずに数字だけを見ると、塾の実力を見誤ることがあります。数字の大きさより、体験授業で「この塾でわが子が伸びそうか」を確かめることが大切です。
この記事では、合格実績が大きく見える3つの仕組みと、体験授業で確かめたい4つのポイント、塾と家庭の役割分担を紹介します。
この記事でわかること
- 塾の合格実績が大きく見える3つの仕組み(ダブルスクール・教材提携・特待生)
- 仕組みを知ったうえでの数字の読み方と、体験授業で確かめたい4つのこと
- ダブルスクールの考え方と、塾と家庭の役割分担
合格実績が大きく見える3つの仕組み

仕組み1:ダブルスクール
中学受験では、大手の塾に通いながら、算数や国語の専門塾にも通う「ダブルスクール」をする子が少なくありません。総合的な学力は大手の塾で、苦手な教科や志望校の対策は専門の塾で、という使い分けです。
この場合、1人の生徒が合格すると、通っていた両方の塾がそれぞれの合格実績に数えることがあります。合格者として数える基準(在籍期間や受講時間など)は塾ごとに決められていて、基準を満たしていれば、どちらの塾が数えても間違いではありません。その結果、各塾の数字を合計すると、実際の合格者数より大きくなります。
仕組み2:教材の提携
塾の中には、自分たちで作った教材を、ほかの塾にも提供しているところがあります。その教材を使って学んだ提携塾の生徒も、教材を作った塾の合格実績に含めることがある、と言われています。教材を提供する側から見ると、「自分たちの学習システムで成果が出た」という考え方です。
このため、合格実績の数字には、その塾の校舎に通っていない生徒が含まれている可能性もあります。気になる場合は、「合格者には提携塾の生徒も含まれていますか」と聞いてみましょう。
仕組み3:特待生制度
大手の塾の多くは、成績が上位の生徒を対象に、授業料を無料にしたり割引したりする特待生の制度を設けています。成績上位の子が集まれば、難関校の合格者数も増えやすくなります。
また、基本のコースのほかに、志望校別の特訓やオプションの講座がたくさん用意されていることもあります。こうした講座を組み合わせて通う家庭が多いほど、合格実績には塾全体の総合力が表れることになります。
仕組みを知ったうえで数字を読む
ここまで読むと、「合格実績は信用できないの?」と感じるかもしれません。そうではありません。合格実績は、その塾に難関校を目指す子が多く集まっていること、志望校の対策のノウハウがあることを示す大切な情報です。
ただ、数字の大きさをそのまま「この塾に入れば合格できる」と受け取らないことが大切です。合格者の数より、母数となる受験者の数、志望校に近い学校の実績、近くの校舎の実績、数年分の推移に目を向けると、数字の中身が見えてきます。
▶ 合格実績の数字の読み方はこちらでくわしく:中学受験の大手の合格者の集計の秘密
塾の説明会で聞いておきたいこと
合格実績の仕組みを知ったら、説明会では数字の中身を少しだけ確かめてみましょう。「合格者数は実人数ですか」「講習だけの生徒や提携塾の生徒も含まれますか」「この校舎から〇〇中学校を受けた人は何人くらいですか」。この3つを聞くだけでも、塾ごとの違いがよく分かります。
あわせて、「宿題は1日どのくらいかかりますか」「家庭ではどこまで見ればいいですか」と聞いておくと、入塾後の生活がイメージしやすくなります。答えをメモして、候補の塾どうしを同じ質問で比べるのがコツです。
体験授業で確かめたい4つのこと

塾選びでいちばん頼りになるのは、子ども自身が体験した感覚です。多くの塾では体験授業や入塾前のテストを受けられるので、候補の塾は実際に足を運んでみましょう。そのときに確かめたいのが、次の4つです。
1. 授業の進め方
授業のスピードや、先生の説明の仕方に子どもがついていけそうかを見ます。大人数のクラスで競い合う方が伸びる子もいれば、少人数でじっくり教わる方が合う子もいます。
2. 宿題の量
宿題の量と、家でどのくらい親が見る必要があるかを確かめます。共働きの家庭では、親が家で見る量が少なくても回る塾の方が、続けやすいことがあります。
3. 質問のしやすさ
分からないところを、授業の後や面談で質問しやすい雰囲気かどうかも大切です。先生との距離が近い塾だと、子どもも相談しやすくなります。
4. 子どもの感想
そして何より、体験した子どもが「また行きたい」と感じたかどうかです。帰り道に「どうだった?」と聞き、子どもの言葉をそのまま受け止めましょう。
ダブルスクールは負担とのバランスで考える
専門の塾を組み合わせるダブルスクールは、苦手な教科を伸ばしたいときに効果的なこともあります。ただし、通う塾が増えるほど、子どもの時間と体力、家庭の費用の負担も大きくなります。
ダブルスクールを考えるときは、今の塾の宿題がきちんと回っているか、睡眠時間を削らずに通えるかを先に確かめましょう。今の塾の先生に「この教科は家庭でどう補えばいいですか」と相談するだけで、外の塾に通わなくても解決することもあります。
塾と家庭の役割を分ける

どんなに合格実績の多い塾でも、家庭の支えがなければ十分な力を発揮できません。塾は、授業と教材、解き方の説明、志望校の対策といった「学ぶ中身」を担います。家庭は、生活のリズムと睡眠、宿題の時間の確保、質問の整理、気持ちの支えといった「学ぶ土台」を担います。
「合格させてもらう」のではなく、塾と家庭で一緒に子どもを支える。この意識で塾と向き合うことが、合格実績の数字よりずっと大切です。
入塾した後も、塾選びは一度で終わりではありません。半年ほどたったら、子どもが授業を楽しめているか、宿題が回っているか、成績の推移はどうかを振り返ってみましょう。うまくいっていないときは、まず塾の先生に相談し、クラスや講座の組み合わせを見直します。それでも合わない場合は、塾を変えることも選択肢の1つです。
よくある質問
Q. 合格実績の多い塾に入れた方が安心ですか?
A. 合格実績が多い塾は、難関校を目指す子が集まる環境や対策のノウハウがある点では心強いです。ただし、子どもに合うかどうかは別の話なので、体験授業で確かめてから決めてください。
Q. ダブルスクールはした方がいいですか?
A. 必ずしも必要ではありません。今の塾で宿題が回っていて、苦手な教科の対策を相談できているなら、まずはそれを続ける方が負担が少なく済みます。
塾選びで確かめる5つのチェック
- □ 合格実績が大きく見える仕組みを知った
- □ 合格者に含まれる生徒の範囲を聞いた
- □ 体験授業で授業の進め方と宿題の量を見た
- □ 子どもが「また行きたい」と言うか確かめた
- □ 塾と家庭の役割分担を決めた
まとめ:数字より「この塾でわが子が伸びるか」
塾の合格実績が大きく見えるのは、ダブルスクール、教材の提携、特待生制度といった仕組みがあるからです。どれも不正ではありませんが、数字の大きさだけで塾を選ぶと、子どもとの相性を見落とすことがあります。
最後に大切なのは、「この塾でわが子は伸びるか」「この環境で楽しく学べるか」という視点です。候補の塾が決まったら、まずは子どもと一緒に体験授業に行ってみましょう。
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