塾の説明会やチラシには、「〇〇中学校 合格者120名」といった大きな数字が並びます。その数字を見て「この塾に通えば合格できそう」と感じるのは自然なことです。ですが、合格実績の数字は、数え方や前提によって見え方が大きく変わります。
結論から言うと、合格実績を見るときは「延べ人数か実人数か」「何人が受けたのか」「毎年安定しているか」の3点を確かめるだけで、数字の印象に振り回されにくくなります。そして、志望校選びで本当に役立つのは、塾の合格者数よりも、合格最低点、教科ごとの配点、解答の形式といった学校側のデータです。
この記事でわかること
- 塾の合格実績を延べ人数・母数・推移の3点で読む方法
- 倍率の見方と、塾の説明会で聞きたい3つの質問
- 志望校選びに使える3つのデータと、偏差値との付き合い方
延べ人数と実人数の違いを知る

まず知っておきたいのが、「延べ人数」と「実人数」の違いです。延べ人数は、1人の生徒が3校に合格した場合に3と数える方式です。実人数は、同じ場合でも1と数えます。中学受験では1人が何校も受けるのが一般的なので、延べ人数で数えると、実際に合格した生徒の数より大きな数字になります。
延べ人数で発表すること自体は、不正ではありません。ただ、数字の大きさをそのまま「通っている生徒の多くが合格している」と受け取ると、実態とずれてしまいます。塾の資料の注意書きに、どちらの数え方なのかが書かれていることもあるので、確かめてみましょう。
合格者に含まれる生徒の範囲も確かめる
もう1つ確かめたいのが、合格者として数える生徒の範囲です。通常の授業に通っている生徒だけなのか、季節講習だけ受けた生徒や、模試だけ受けた生徒も含むのか。塾によって基準は違います。気になる場合は、説明会で「合格者数には、どの範囲の生徒が含まれていますか」と聞いてみてください。
公表されている倍率の見方
学校が発表する倍率は、一般に応募者数を合格者数で割ったものです。中学受験では多くの受験生が複数の学校に出願するため、ある学校の応募者の中には、ほかの学校が第一志望の受験生も含まれています。
また、出願しても当日受験しない人もいます。応募者数ではなく実際の受験者数で割った「実質倍率」を公表している学校もあるので、2つを見比べてみると、数字の印象が変わることがあります。倍率の高さだけで「難しすぎる」と判断せず、子どもの得点が合格最低点にどれだけ近いかで考える方が現実的です。
合格実績を読む4つのチェック

チェック1:何人が受けたのか
合格者数だけでなく、その塾から何人が受験したのかも大切です。100人が受けて50人合格した塾と、1,000人が受けて200人合格した塾では、合格者数は後者が多くても、合格の割合は前者が高くなります。受験者数まで公表している塾は多くありませんが、分かる範囲で確かめておくと参考になります。
チェック2:志望校に近い学校の実績
最難関校の合格者数は目立ちますが、わが子の志望校と同じくらいの偏差値帯の学校の実績も見ておきましょう。同じ塾でも、学校によって得意・不得意があります。過去問の対策や出題傾向の分析が蓄積されている学校ほど、実績が安定している傾向があります。
チェック3:3〜5年の推移
1年分だけでなく、3〜5年分の推移を見ると、その塾の指導が安定しているかが分かります。ある年だけ急に増えている場合は、その学年に成績上位の生徒が集まっていた可能性もあります。
チェック4:通う校舎の実績
大手の塾は全体の合格者数を発表しますが、実際に子どもが通うのは近くの1つの校舎です。校舎ごとの実績を出している塾もあるので、説明会で聞いてみるとよいでしょう。
また、合格者の数は塾の規模にもほぼ比例します。生徒が多い塾ほど合格者数も多くなるのは当然です。入塾テストで一定の成績の生徒を集めている塾では、もともと学力の高い子が多いという前提もあります。合格者数の多さだけで、塾の指導力を判断しないことが大切です。
塾の説明会で聞きたい3つの質問
合格実績の中身は、資料を読むだけでは分からないことも多いものです。説明会や個別相談では、次の3つを聞いてみてください。「合格者数は延べ人数ですか、実人数ですか」「合格者には、講習だけ受けた生徒も含まれていますか」「この校舎から、〇〇中学校を何人くらい受けていますか」。
聞きにくいと感じるかもしれませんが、ていねいに答えてくれる塾は、数字に誠実な塾だと考えることもできます。答えをメモしておき、ほかの塾と同じ質問で比べると、違いが見えやすくなります。
志望校選びに使える3つのデータ

合格最低点
多くの学校は、過去の入試の合格最低点を公表しています。たとえば、400点満点で合格最低点が240点なら、得点率は60%です。模試や過去問で、6割前後を安定して取れているかが1つの目安になります。点数を「あと何点」と具体的にすると、今やるべきことが見えやすくなります。
教科ごとの配点
学校によって、教科の配点は違います。算数の配点が高い学校もあれば、4教科を均等に見る学校もあります。子どもの得意教科と、学校の配点のバランスが合っているかを確かめておくと、偏差値だけでは分からない相性が見えてきます。
解答の形式
記述式の問題が多い学校か、選択式が中心の学校かによって、対策は変わります。過去問を1年分見るだけでも、答案用紙の形や記述の量が分かります。記述が多い学校なら、ふだんから考えを文章にする練習を取り入れておきましょう。
▶ 過去問の始め方はこちら:中学受験の過去問はいつから始める? 9月に整えたい家庭の進め方
偏差値の数字との付き合い方
模試の偏差値は、その模試を受けた集団の中での位置を表す数字です。受ける模試が違えば、受験者の層も違うので、同じ子でも偏差値は変わります。違う模試の偏差値どうしを並べて比べないようにしましょう。
総合の偏差値が同じでも、教科ごとの得意・不得意によって、志望校との相性は大きく変わります。偏差値は参考の1つにとどめ、志望校の出題傾向と子どもの得意分野が合っているかを重視することが大切です。
よくある質問
Q. 合格実績が多い塾ほど、よい塾ですか?
A. 合格者数は塾の規模にも比例するので、それだけでは判断できません。子どもに合った授業の進め方か、通いやすいか、志望校に近い学校の実績が安定しているかを合わせて見てください。
Q. 合格実績はどこで確かめられますか?
A. 各塾のホームページや説明会の資料で公表されています。数え方の注意書きもあわせて確かめ、気になる点は説明会で質問してください。
合格実績と志望校データを確かめる5つのチェック
- □ 延べ人数か実人数かを確かめた
- □ 合格者に含まれる生徒の範囲を聞いた
- □ 志望校に近い学校の3〜5年の推移を見た
- □ 志望校の合格最低点を得点率にした
- □ 教科別の配点と解答の形式を確かめた
まとめ:数字の中身を見て、最後は相性で選ぶ
塾の合格実績は、延べ人数か実人数か、何人が受けたのか、毎年安定しているかを確かめるだけで、ずいぶん見え方が変わります。志望校選びでは、合格最低点、教科ごとの配点、解答の形式といった学校側のデータが役に立ちます。
数字は大切な参考ですが、最後は「この学校でなら、わが子が生き生きと学べる」と思える場所を選ぶことがいちばんです。次の塾の説明会では、まず「合格者数の数え方」を聞くところから始めてみましょう。
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